August 22, 2010 8:51 PM
ものを観る視点
先週の月曜に唐津に行ってきました。集合時間まで余裕があったので梶原さんの工房におじゃまして、作品を拝見させていただきました。
黒釉の発色のおもしろさも目を奪われながら、他にとっても気になる茶碗を発見したので、梶原さんに「この茶碗、ご自分でどう思われます?」と、お聞きしてみました。
梶原さんは「奥高麗でしょ」と答え、私は「これって凄いじゃないですか、なかなかでるものじゃないでしょ~」言ったところ
「それを、わかってくれる人はいないのよ、奥高麗といったら大振りの茶碗の形じゃないと・・・コレは小さいし・・・誰もこれをいいとは言ってくれないのよ」
と、がっかりしたご様子。
梶原さんと、私の共通のお客さがおり、「あの方に勧めると、多分気に入るとおもいますよ~写真を撮ってお送りしましょうか?」
と、言ったところ「お願いします」とのお返事で、車にカメラをとりに行き、戻ってくると茶碗は包装され袋の中。
「これは持って帰ってください」と渡されてしまいました。
「もし、誰も買われる方がいなければ、私がいただきます」といって紙袋を受け取った。
話は変わって・・・数日後。
同じような出来事が私にもあり、梶原さんと同じようなことを自分で言ってしまった(笑)
昨日は、元蒐集家でもあるお客様から、ご連絡をいただいていたので、自作の気になる盃3点(山盃、筒、鎬)を持参し観ていただいた。
そのお客様、行った先のお店のご主人の視点は同じ。じゃがいもみたいな山盃を「これは格段上」と評価してくださり、古作を交え、「この中で、どれを使いたいです?」の問いにも、その山盃を選んでくれた。今まであまり目に止めてもらえなかったものだったので、驚いた。(冗談でも嬉しい・・・)
鎬の盃は意見が分かれる(以前の鎬のほうが土色といい、鎬の線もよかったとの事)
最後に「今まで買った古陶は全部捨てなさい、そうするともっとよいものができるよ」と。毎回同じことを言われる。
言わんとされてるのは、これからは最高によいものだけをみていきなさいという事なのでしょうが、まだ捨てきれず、「これはもういらんやろー」と言われながらも、古作の盃をお借りしてしまう・・・。
話題にあがった山盃とほぼ同じ原料で作り、キズがでたため現在自宅で使用しているもの。
そういえば、↓この一番下の皮鯨筒湯呑も同じ原料だった。
http://www.utuwa-ya.jp/blog/2008/06/post-305.html
未使用の器をみて、そこからどう育つかを想像できる人はほんとうにごく少数だと思う。
過去の「ものを見る視点」はこちら→http://www.utuwa-ya.jp/blog/2009/11/post-185.html
9月2日 追記
実は、持参した3つの盃のなかで、私が一番気になったのは筒形の盃で・・・次が山盃だった。一見、なんの変化もない、普通の感じ。しかし、この中の細かい部分をみて欲しかった。
この頃は、自分のなかで、小さな盃のなかにどれだけの景色を織り込めるかが今後の大きな課題。そう思うようになった。(酒器、茶道具のみ)
そして、誰も見ていないような、細かいところに気付いてもらえると、最高の幸せを感じる・・・。
それと、お預けした山盃がどのようになるのか、楽しみでもあります。
Trackback (0)
Trackback URL: http://www.utuwa-ya.jp/mt/mt-tb.cgi/2984
Comments (10)
Post a Comment
伊藤さん一押しの梶原さんでしたね、また尋ねてみたくなりました。
>今まで買った古陶は全部捨てなさい
そうなさい。さんざんおノロケも聞いてあげましたし(笑)
その山盃の画像を載せないのはイケズです。ま、そこがうつわやさんのつつしみ深さでしょうが。
梶原さんのいいですね、高台もいいし釉の具合もいい。
茶助さん、素材への拘りは唐津一だと思います。素材がよくてこそ惜しみなく使え、よりよくなると思います。
匿名さん、オノロケ聞いてくださったかたですね(笑)
まだ捨てきれません~(頭の片隅で全て売り払い、一流古美術店でとっておきの一つをお買い物・・・妄想も)
画像を載せないのは、今は手元になく・・・古作をお借りするかわりの、担保となりました。酒好きにお貸しすれば、お酒でどう育つかもわかりますし、つつしみ深いというか、慾深いです。
この梶原さんの茶碗、やはりいいですよね~。(予約済みとなりました)
いつも楽しく拝見しています。梶原さんの茶碗もとても良い雰囲気ですが、馬盥鉢素晴らしいですね。素人陶芸で唐津を作っていますが、憧れます。また素晴らしい作品のアップを楽しみにしております。
うつわやさんの奥高麗の定義はどんなのですか?奥高麗の定義って人によって少しずつ違いますよね。そこに、その人の好みや、こだわりが感じられて面白いと思うんです。私にとっての奥高麗は、大振りで、土味が柔らかく感じられて、おおらかで、それと大事なのがちょっとドン臭い(これは関西弁かな?意味わかります?この表現がピッタリなんですけど…言い換えたら何やろ…?洗練されすぎていない?かな?)ところがある、という感じです。もちろん私の定義を人に押し付けるつもりはなく、それぞれの感じ方を聞くのが楽しみなだけです。私の定義でいくと、梶原さんのお茶碗は、奥高麗ではなくなる(すでに定義を押し付けてしまっている!…汗・汗・汗)のですが、「良い高台の素晴らしい唐津のお茶碗」でいいのでは?と勝手に思ったりします。大振りでおおらかな奥高麗は、茶事の濃い茶が似合いますが、薄茶にはその大きさがドン臭すぎて使えまへんですよ。それに比べて梶原さんのお茶碗は、薄茶席で使ってみたい素晴らしい茶碗ですよね。
ヒロさん、はじめまして。
現在、9月の展示会(千葉にて4~12日)に向けて唐津をつくってます。
唐津に行った日に、原陶土さんにも寄ってお願いしていた粘土をもらってきました。
よいものができましたら、写真をUPいたしますね。
コメントありがとうございます。
yamaさんの奥高麗の定義、伝わってきましたよ~。
梶原さんのお作の土と釉薬を見たときに、まさにこの感じ!といった印象でした。
もちろん形も重要だと思います。
そういえば、出光美術館で筒茶碗をみた時に、”おおっ~奥高麗”と思った事もありました。なんの定義にもなってないですね(笑)
ちょっと、その筒の写真をさがしてみます~。
いいお茶碗、です。
さすがだなぁ、梶原さん。それを受けるうつわやさんのやり取りは本当に良い空気感、ですね。
Moneyさん、梶原さんの視点もおもしろいですよね。
いつだったか、私が作ったものみて「なんで削りが逆なん?なんで縁より高台のほうが焼けてる?」って言われてました。
梶原さんの茶碗、予約済みに・・・・・
非売品かと思ってました、残念・・・
もう一つ、梶原さんのところにありましたよ。
薄作りになった碗形でした。ご希望の場合は直接梶原さんのほうにお願いいたします。